Canon EF85mm F1.2L Ⅱ USM(導入編)
今回ご紹介するキヤノンのレンズは、同社のデジタル一眼カメラEOSシリーズに利用できるEFレンズラインナップの内の一本です。
2年程前にそれまで使っていた広角~標準域のズームレンズ(35mm判フルサイズ対応)を手離して以来、この領域では単焦点レンズをコツコツと揃えてきましたが、今回もその流れの一環となります。
現在、手元にある単焦点レンズ(フルサイズ対応)は全てキヤノン製の24mm F1.4L、35mm F2 IS、100mm F2.8L MACRO ISの3本。
以前中古で購入した50mm F1.4を手離してからは、これに加え新たな50mmもしくは85mmレンズをと模索し続けてきました。
この焦点距離のレンズはキヤノン純正の現行ラインナップ(2015年11月現在)でもEF50mm F1.8 STM、EF50mm F1.4 USM、EF50mm F1.2L USM、EF85mm F1.8 USM、EF85mm F1.2L Ⅱ USMの5本があります。
これに、シグマやタムロンなど、サードパーティーのラインナップ(これらもかなり評価が高い)を加えると、選択肢はさらに広がります。
本来、焦点距離50mmと85mmは利用目的が異なるため、どちらかだけを選ぶものでないことは承知しています。
しかし、いずれは両方揃えるにしても、どちらから先に入手するかは(経済面含め)大きな問題なので、今回はその両方を天秤にかけて悩みました。
50mmはフィルムカメラ時代の標準レンズと言われてきた焦点距離で、引けば広角、寄ればクローズアップにも使えます。
また、画の歪み等も少なく、軽量コンパクトなものも多いことから、使い勝手の面では上を行きます。
各社、複数のラインナップを用意しており、選択肢が広いのも魅力です。
85mmは中望遠に入る焦点距離で、ちょっと距離を置いてのスナップやポートレート撮影に力を発揮します。
もちろん、風景にも利用できますが、景色全体を写しとるよりは、主体を決めての画づくりをしていくことになるでしょう。
50mmは広範囲に使えるだけに、狙った画をつくろうとすると難しさもあります。
実際、一旦は入手したEF50mm F1.4 USMを手離した背景には(資金面もありますが)どうも思った画をつくり上げられなかった面も大きく関与していました。
色々と悩んだ末、どちらの焦点距離を選ぶにしても純正F1.2Lを入手しようと決めたのは、いつもの物欲優先モードからです。
せっかく大きくて重いデジタル一眼レフカメラ(Canon EOS 5D MarkⅢ)を使っているからには、その性能を如何なく発揮できるレンズを使ってみたい気持ちがあります。
そんな気持ちが先走り、自分の実力は全く省みずに候補をEF50mm F1.2L USM(以下50mm)とEF85mm F1.2L Ⅱ USM(以下85mm)の2本に絞り込みました。
このレンズ、どちらか一方を買うともう一方も欲しくなると口コミには書かれています。
上記のように使用目的が異なるため、確かに一方だけで互いを補完できるものではないでしょう。
そして、レンズの持つ性格(描写含め)も異なるようです。
どちらをまず先に入手すべきか、双方の特徴を各種記事や口コミで調べました。
結果、使い勝手を優先すれば、間違いなく50mmに軍配が上がることがわかります。
・最短撮影距離(0.45m)
・最大撮影倍率(0.15倍)
・AFスピード
・大きさ、重さ
・価格
上記の点は、いずれも50mmの方が勝っています。
ちなみに、85mmの最短撮影距離は0.95m、最大撮影倍率は0.11倍で、重さは1kg超と50mmの二倍近くあります。
私の中で特に大きいのは(価格を除けば)最短撮影距離です。
明るい単焦点レンズは室内で使うことも多く、子供を撮影する際などには0.45m(センサー面から45cm)まで寄れる50mmの方が圧倒的に有利です。
また、旅行や外出の際にこれ一本で済まそうとした場合、テーブルフォトなど含め利用できるのも50mmの魅力です。
しかし、当然ながら85mmにはそれなりの魅力もあります。
・開放から芯のある描写となだらかで美しいボケ
・遅いながらも(絞りや距離にかかわらず)正確なAF
・所有する満足感
いずれも比較すればと言うことであり、50mmにこれらが備わっていない訳では決してありません。
それでも85mmに魅かれるとすれば、それは弱点を全て消し去ってしまう程うっとりする写りだとか。
当然、それは所有する満足感にもつながってきます。
実際、この85mmは1989年発売の初代から一度だけモデルチェンジ(2006年3月)してⅡ型になっていますが、その際に見直されたのは鉛フリーレンズへの変更、デジタル対応のレンズコーティング、円形絞りの採用、AF速度の改善のみとのこと。
つまり、基本的な設計やレンズ構成は25年間変わっておらず、この写りを考えると変えようがないとのことです。
物欲先行者(私)はこんな台詞に弱く、またそうであれば今後モデルチェンジがあってもその存在感は薄れないでしょう。
どのレンズにも完全はなく、傾向や強み、弱みがあるのが常だからです。
結局はその描き出す世界(私に表現できるかは別ですが)に憧れ、85mmを選択することとしました。
そんな訳で、手持ちの機材を整理し、EF85mm F1.2L Ⅱ USMを注文しました。
レンズは入荷未定となっていましたが、幸いにも在庫があり、数日待って手に入れることができました。
自宅にてレンズの入った箱を取り出すと、ずっしりと重みを感じます。
サイズの割に重いのは、分厚いレンズのせいでしょうか。
モデルとしては旧いですが、パッケージは最新のシルバーのものに変わっています。
パッケージを開けると、取扱説明書、CD-ROM、保証書とレンズケースが出てきます。
それらを取り出し、いよいよレンズの登場です。
「砲丸」などと表現されるそれは、確かにずっしりとした重みを感じました。
うかうかしていると落としそうで、緊張します。
あまりの径の太さにマウント部がくびれ細く見えますが、キヤノンのEFマウントは口径としては35mm判最大級。
いかにレンズ本体が太いのかはひっくり返してみるとよくわかります。
マウントの先で円周を切り落としたようなデザインになっている本レンズ。
これまで何本ものレンズを見てきましたが、こんなのははじめてです。
レンズ装着時の目印になる赤い点が滑稽に見えます。
レンズリアキャップを外して見ます。
こぼれ落ちそうなと表現される後玉。
カメラへの装着時にぶつけないよう注意が必要とのことで、もっと飛び出しているのかと思いましたが、少なくとも交換頻度の低い私にとってはそう脅威でもありませんでした。
しかし、接点部分がマウント外周から後玉の上に張り出しているのを見ても、これはただ者ではありません。
続いて、レンズフロントキャップも外してみました。
フロントキャップは、中心付近をつまんで外せるⅡ型となっています。
普段、臆病な私は埃の付着や侵入を嫌ってこうした写真は撮りません。
しかし、このレンズに限っては撮らざるを得ないほど。
それほど筒抜け(文字通り)のレンズからはオーラが放たれていました。
7群 8枚と言うシンプルなレンズ構成も、この透明感に寄与しているのでしょう。
早速、EOS 5D MarkⅢ(以下5DⅢ)に装着してみます。
5DⅢはボディが大柄なこともあり、少なくともこの段階で違和感はありません。
付属の円形フードは独特の装着方法。
他のモデルのように回して装着するのではなく、前方から差し込むようにつけます。
左右のボタンを押せば外れ、装着した状態でクルクルと空転します。
このレンズはピントリングを回すとフードも一緒に回る構造(後述)のため、こうした仕組みが必要だったのでしょう。
横から見ると、このレンズの径の太さがよりわかります。
通称「85デブ」などとも呼ばれるこのレンズ、その呼称もよく理解できる形です。
なんとなく親近感も沸きます(わかる方にはおわかりでしょうが)。
レンズフィルター径は72mm。
明るさの割にはF2.8通しのズームレンズなどよりはフィルター径が小さく、手持ちのフィルターが流用できました(レンズ保護)。
この手のレンズにレンズ保護フィルターを装着することに関しては賛否がありますが、万が一にでも前玉を傷つけたくない私は、基本的に装着しています。
それにしても凄い迫力。
中望遠域とは言え、とても単焦点レンズとは思えません。
この時点で、私の所有欲の半分は満たされてしまいました。
それほど、工芸品としての魅力が高いレンズです。
この日、子供たちが寝静まった後に室内で数枚シャッターを切ってみましたが、お見せするような写真ではありません。
ただし、よく書かれている使い勝手(写り以外の)に関しては実感できましたので、記述しておきます。
まず、重さと大きさに関してですが、大きさは見ての通りです。
しかし、重さも含めカメラ本体とのバランスは悪くなく、5DⅢにつけている限りフロントヘビーな印象はありません。
レンズ径は太いですが、その形状と塗装(滑り止め)も相まって、持ち歩くのに不安は感じませんでした。
また、ピントリングですが、このレンズのピントリングはバイ・ワイヤ(電子制御、モーター駆動)となっています。
そのため、スイッチをMFに切り替えても、カメラに装着して電源が入っていない限りリングが空転するだけでレンズは動きません。
また、ピッチを細かくコントロールする(開放付近の被写界深度は薄い)ため、リングの動きは駆動状態でも軽く、回転幅も大き目に取ってあります。
私はひとまず気になりませんでしたが、これは追々使用しての感想を書いていきたいと思います。
ピント合わせは現在主流のインナーフォーカス/リアフォーカスではなく、全群繰り出し式です。
画質追及のための仕様ですが、このため昨今のレンズにしては珍しくフォーカスによりレンズ全長(前玉付近)が伸び縮みします。
上記のように通電していないとピントリングの操作ができず、電源OFF時に格納される仕様にもなっていないため、レンズを外す際には一旦無限遠(全長が短くなる)に合わせて電源を切る必要があります。
しかしこの伸び縮みはフード内で行われるため、少なくともカメラに装着し続ける分には(かつフードを装着している分には)気になりませんでした。
ちなみに、MFでピントリングを回すと、フードも一緒になって回ります。
これは、AFでピント合わせ後に微調整するフルタイムマニュアルフォーカス時も同様です。
しかし、AFでの合焦時にはピントリングが回転しないため、フードも回転しません。
以上、色々な意味で一昔(二昔?)前のレンズを見ているようで、微笑ましくもあります。
その様子はかなり以前、フィルム時代に使っていたEF100mm F2.8 マクロ(非USM)を彷彿させてくれました。
使い勝手だけみたら、このレンズはむしろ弱点だらけなのかもしれません。
85mmと言う焦点距離にも関わらず手ブレ補正機能も備えておらず、機能的にも実にシンプルです。
しかし、そのすべては絞り開放からの美しい写りに直結させるためと理解すれば、その不便さもこの上なく魅力的な道具の一部となる訳です。
それを実感できるかどうかは、このレンズの特徴を活かした撮影ができるかどうかにかかっています。
そうした意味では甚だ不安ではありますが、続きの実写編にて少しでもお伝えできるよう頑張ってみたいと思います。
導入編の最後に、今一度このレンズの特徴と注意点(画質面以外)をまとめておきます。
・85mm単焦点レンズとしては大きく、重い(1,025g)
・高い(2015年11月現在実勢価格は20万円弱)
・最短撮影距離は長く(0.95m)最大撮影倍率は0.11倍
・AFはキヤノンのUSM搭載EFレンズとしては遅い(動体にはきつい)
・ピントリングはバイ・ワイヤ方式で通電なしでは空転する
・通電してもピントリングは軽く、好みが分かれる(回転幅も大きい)
・全群繰り出し式のフォーカスで、全長が伸び縮みする(フードに隠れるが)
・電源を切る前に無限遠にセットしておかないと伸びたままになる
・フードはピントリングとともに回る(AFでは回らない)
・研削非球面レンズ含め25年間変わらぬ基本設計
・レンズは美しく所有欲を満たしてくれる(主観)
全てはその画質のために。
実写編へ続く
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